花魁道中いろは唄~外伝~

恋うて涙は色むらさきに咲く ♂×2 ♀×2 / 白鷹

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所要時間:55分程度
利用規約をお読みいただきご利用下さい。

2019/3/2 利用規約を改訂しました。必ず読んでから上演をお願いいたします。

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◆登場人物◆

 

椿 (♀) 20歳

大見世華屋の花魁。

牡丹に次ぐ花魁であり次代お職の肩書を持つ。

八歳の時に若山に売られて以来引っ込み禿として外部は勿論、見世の内部の者達にも隠して育てられた。

元来の美しさと見た感じの可愛らしさで男の気を引く。

芯の通ったしっかり者で、頭の回転が早く根付く性格は非常に厳しい。蓮太郎と恋仲にある。

 

 

菫 (♀) 16歳

 

椿と同じ武家の生まれだが、三十表二人扶持の貧乏侍の為売られた。

生まれのせいで我儘、高慢で高飛車な性格だったが椿の躾で更生し、今は大変素直で優しい娘に変貌。

突出しを控えており心身ともに不安を抱えるが、ひょんな事から知り合った若山番所勤めの同心、公彦(きみひこ)と心を寄せ合う様になる。

 

 

蓮太郎 (♂)20歳

 

華屋の若衆で料理番。

生真面目で自他共に厳しく真面目な性格だが椿に関してはかなり緩い。

華屋の元お職でもあった石楠花花魁の産んだ青年で大変な美形であり、よく陰間と間違われる。

正義感が強く、冷たい表面とは裏腹にとても優しい。が、感情表現が苦手。

 

 

司波 流燈 33歳 (♂) (シバ リュウト)

上方下りの医者。

京の公家に奉公していたが忍虎との密命の為尾張に下る。名医で高名。

見立ては確かで禁令を言い渡されている蘭方なども密かに学んでいる為西洋医学にも詳しく知識量が膨大。

華屋椿の馴染客。禿時代から椿をみており、新造出しの費用を出した。

初見世も狙っていたが折悪く、江戸の御殿医に呼ばれていた為初見世を逃した。

――――――――

役表

 

椿   (♀)・・・

菫   (♀)・・・
蓮太郎 (♂)・・・
流燈  (♂)・・・

――――――――――――――――――――――――
 

菫   「蓮太郎」

蓮太郎 「菫さん、なんでしょう。躾は? 終わったんですか?」

菫   「終わったよ! えへへー、椿姐さんに歌が上手いって褒められた」

蓮太郎 「褒め・・・? つ、椿が?」

菫   「あーっ! 信じてないでしょ! ホントに褒められたんだから。手習いは苦手だけど、歌と三味を伸ばして行こうって言ってくれたんだもん」

蓮太郎 「それは・・・、良かったですね・・・」

菫   「何、その顔」

蓮太郎 「拍子抜けしただけですよ。あんな事もありましたし」

菫   「鞭打ち? でもあたしが打たれた訳じゃないし。その・・・、あの人、腕の傷はどうなったの?」

蓮太郎 「治療は終わっていますし、逆に賃金をはずんで貰ったというのと予想外の休暇で悠々自適に遊んでますよ」

菫   「ふわー、元気だねー、痛かっただろうに」

蓮太郎 「痛みなどは一瞬でしょうし、危険と言えば破傷風ですがきちんと治療すれば防げますから。それで、何の用ですか? 油売ってる時間があるんですか?」

菫   「蓮太郎って椿姐さんと寝たの?」

蓮太郎 「っ?!」

菫   「ねぇ・・・、寝たの?」

蓮太郎 「寝てませんよ。しきたりはご存知でしょう?」

菫   「そっか・・・、律儀に守ってるんだね」

蓮太郎 「なんでそんな事を聞くんですか?」

菫   「えーっと、蓮太郎って椿姐さんが新造の時から知ってるの?」

蓮太郎 「質問の意図が全く判らないんですが。椿が売られたその日に会いました」

菫   「ね、ね、いつ頃から好きって気付いたの?」

蓮太郎 「・・・、夜見世の支度を手伝ったらどうですか?」

菫   「ちゃんと手伝うから、あとちょっと」

蓮太郎 「はぁ?」

菫   「蓮太郎・・・、椿姐さんの初見世、辛くなかったのかな、って・・・」

蓮太郎 「・・・、とんでもない傷を抉って来ますね。早く部屋に戻って下さい」

菫   「ごめんね! あの、辛いと思うんだけど、あの・・・、あたし、好きな人がいるの」

蓮太郎 「え」

菫   「見世は違うの、町方の同心で・・・、あの、ちょっとチンピラに絡まれた時に助けて貰って」

蓮太郎 「間夫飼いは褒められた行為ではありませんが、同じ見世でないなら隠れて会う事は出来るでしょう。俺と椿の想いが参考になるとは思いません」

菫   「あたし、もうすぐ初見世なの!」

蓮太郎 「・・・おめでとうございます」

菫   「嫌なの!」

蓮太郎 「俺に言ってどうにかなるとでも? 足抜けしたいなんて言いませんよね」

菫   「逃げられない事くらい知ってるよ。でも、でも!」

蓮太郎  「部屋に戻って下さい」

菫   「蓮太郎がどう思ったかは判らないよ。聞きたいけど、そんなに怒らせる積もりなかったの、ごめんなさい」

蓮太郎 「・・・怒っている訳じゃありません。勘違いさせたなら済みません」

菫   「でも、知っててね。好きじゃない人にお開帳なんて死んだ方がましってくらい嫌だから、きっと椿姐さんは毎夜そう思ってるから、それだけ、知ってて欲しいの」

蓮太郎 「ふぅ・・・、呆れました。今更そんな事を伝えたかったんですか?」

菫   「椿姐さんに、沢山迷惑を掛けたから、その」

蓮太郎 「椿の気持ちを代弁して、恩返しの積もり、ですか?」

菫   「た、単純かもしれないけど、蓮太郎が椿姐さんの事どう思ってるか、聞きたい、な、って」

蓮太郎 「は? あの、今更な事をどうして」

菫   「じゃあ、ちゃんと椿姐さんに初見世の時の気持ちとか、伝えた?」

蓮太郎 「伝える筈有りませんよ。過去の事ですし、伝えたからと何か変わる訳ではない」

菫   「あたしね、何度か会ってずっと好きで、でも言えなくて」

蓮太郎 「・・・。変わった人ですね。菫さん」

菫   「ほぇ? 変わってる? なんで?」

蓮太郎 「他の若衆ならいざ知らず、俺を捕まえて恋愛話をしようとする人は初めてです」

菫   「え? なんで? 一番恋とか愛とかよく知ってそうじゃない」

蓮太郎 「えぇ・・・(困惑)」

菫   「だって十年以上も同じ人を想っていられるのって素敵だと思うの」

蓮太郎 「依怙地だとはよく言われますけどね」

菫   「なかなか自分の気持ちって伝えるのも言うのも勇気がなくて、同心の人に好きだって言って貰えて嬉しかった」

蓮太郎 「惚気ですか・・・」

菫   「ホントに初見世の時の気持ち、伝えてもどうしようもないって思ってる?」

蓮太郎 「そうですね、何度も言いますが今更なので」

菫   「椿姐さんは、蓮太郎の気持ち聞けたら嬉しいと思うの」

蓮太郎 「過ぎた事をいつまでも言うのは鬱陶しいだけです」

菫   「初見世は過ぎちゃったかもしれないけど、それでも椿姐さんを想ってる気持ちは続いてるんでしょ? それなら・・・」

蓮太郎 「判りました、もう、判ったので、部屋に戻って下さい」

菫   「ホントに、伝えてね?」

蓮太郎 「気が向いたら」

菫   「むー・・・っ。そうでないと、勘違いされたままなんだからね!」

蓮太郎 「勘違い?」

菫   「蓮太郎は生娘じゃない椿姐さんを心のどこかで軽蔑してる・・・、て・・・、ぅ」

蓮太郎 「そんな軽蔑する筈ない」

菫   「あたしも、お開帳したら・・・、公彦(きみひこ)さんに、嫌われちゃうかもしれないって思って」

蓮太郎 「失礼だとは思いますが、あなたが遊女だと知っていながらお開帳後に態度が変わるならそれまでの人でしょう」

菫   「もしも、そうなったら・・・、ってそう考えたら、心細くて」

蓮太郎 「それは、俺にどうにか出来る問題ではありません」

菫   「蓮太郎は椿姐さんが遊女だからって、軽蔑しないよね・・・?」

蓮太郎 「軽蔑なんてしません。あの、何が言いた・・・、・・・、泣いてるんですか?」

菫   「椿姐さんの所で泣いたら、すごく我慢してるのに、こんな事くらいでって怒られちゃうから、う・・・っ、ひっく、ぐす」

蓮太郎 「・・・、・・・、・・・葛餅、食べますか?」

 

 

 

菫   「見て―!!椿姐さん見て!」

椿   「菫、騒がしい。ただでさえ声が高いんだからそんなに騒ぎんすな」

菫   「声が高いのは椿姐さんも同じでありんす」

椿   「少し眠たかったからびっくりしたんでありんすよ。で? 何?」

菫   「椿姐さん、最近眠たい事多い・・・?」

椿   「お開帳したら昼なんか常に眠たい・・・、ふぁあ・・・」

菫   「あ、そうだ!! 見て、簪! 貰ったの!」

椿   「貰いんした、でありんす。・・・、玉ぐしじゃありんせんか、安っぽい。そんなの座敷に付けて行ったら許しんせんよ」

菫   「・・・っ! でも、その、・・・公彦(きみひこ)さんが若山に配属になって、初めての賃金で買ってくれた・・・、から、あの」

椿   「配属? って同心の・・・? 公彦(きみひこ)さんって言うんだ」

菫   「・・・ん? なんで知ってるの?」

椿   「しまった」

菫   「蓮太郎から聞いたんだ。もー・・・」

椿   「ごめんなんし。でも、蓮太郎は心配して番所に様子を見に行ってくれたんでありんすよ。真面目そうな人柄で優しい人だと聞きんした」

菫   「江戸に嫁いだお姉さんの所から帰って来る道中で買って来てくれたの」

椿   「そう・・・、この辺りでは手に入らないものなら余計大切ね。貸して? 挿してあげる」

菫   「わぁああい、はい! 椿姐さんのその玉串も蓮太郎から?」

椿   「そうよ、これも初めての賃金でって買ってくれたの」

菫   「今の蓮太郎なら新しいの買えそうだけど、もうちょっといいもの」

椿   「新しいのを買うからってよく言われるよ? でもあたしはこれが気に入ってるの。きっと慣れない贈り物を一生懸命選んだんだろうなとか、財布とにらめっこしながら、簪屋に入ったんだろうなって考えると、手放せないじゃない?」

菫   「判るぅ・・・。だからあたしもこれ宝物にするの」

椿   「失くしたかもって思うと不安になるよ?」

菫   「知ってるー。だって姐さん起きて真っ先にその簪挿してるもんね」

椿   「そういうの見てるんだ。・・・、菫、判ってると思うけど」

菫   「ん?」

椿   「寝たら、ダメよ?」

菫   「・・・判って、おりんす」

椿   「辛いのは知ってる。破瓜の痛みと誤魔化して泣いてもいいから、それだけは守ってね」

菫   「好きな人がいないとか、いても生娘じゃなかったとかっていう姐さんなら、前のあたしみたいに反抗してたかもしれない。でも椿姐さんも乗り越えてきた痛みだから。きっと誰よりも身を持って知ってると思うから、だから守れる」

椿   「そうね・・・。本当に初めてが蓮太郎なら・・・、って・・・、あ」

菫   「ねねねね、姐さん?!?!」

椿   「ご、ごめん! え? 嘘? なんで? 未だに・・・、涙なんか、出るんだ・・・」

菫   「ややや、あの、て、手拭い! は、はい」

椿   「やだもう・・・、なんで今更泣いたりなんか。みっともない」

菫   「姐さん・・・、最近ちょっと変・・・?」

椿   「牡丹姐さんが亡くなってから・・・、ちょっと気持ちが落ち着かないのかもしれない」

 

 

流燈 「味覚が変わった。・・・どない変わらはりました?」
蓮太郎「どう、というと難しいですけど、元々薄味が好きだったんですが、最近出汁がきいてないとか、味がないとか言うようになってます」
流燈 「薄味の方が体にはええんどすけど。そない全部ですか」
蓮太郎「はい。あとは・・・、酢の物を好むようになりました」
流燈 「酢(す)の物(もん)が好き言うんなら仰山(ぎょうさん)食べさしたったらええですわ。なんなら樽(たる)に椿はんと酢を一緒に漬け込んだらどないでっしゃろ」
蓮太郎「冗談で言ってる訳じゃなくて。前までは割と酸っぱいものが苦手な所があって食べるんですが量は少なめでした。ですが、最近は酢の物の余った酢も綺麗に飲んでる有り様で」
流燈 「そらあきまへんわ、三杯酢(さんばいず)は砂糖やら醤油やらはいっとります。酢のまま飲むんならええですけど」
蓮太郎「あとは、青魚を食べなくなりました」
流燈 「好きやおまへんどした?」
蓮太郎「イワシもアジもサンマもブリも大好物でした」
流燈 「それが全部ダメにならはったんどすか」
蓮太郎「はい。匂いがきついからだと思うので、しょうがと酒で匂いを飛ばしてますけど食べませんね。
なるべく新鮮なものをと用意はしてるんですが」
流燈 「こまめに気ぃ遣こて、全部ダメやと気ぃ削がれまへんか?」
蓮太郎「あ、それは別に。当たりの食べ物があるとそれはそれで面白いので」
流燈 「当たりの食べ物」
蓮太郎「鶏のささ身に梅肉としそをはさんで天ぷらにしたのが好評でした」
流燈 「それは普通に旨そうですわ。けど、揚げもん苦手やおまへんどした?」
蓮太郎「脂っこいものも肉も苦手でしたよ?」
流燈 「ようささ身の揚げもん食べさせよ思いはりましたな」
蓮太郎「好きだったものが全部ダメなら逆に嫌いだったものは?って考えただけです」
流燈 「なるほど? 蓮太郎さんが苦痛でなく楽しんでるならそれでええんちゃいます?」
蓮太郎「あの、体の調子がおかしいとか・・・、ですか?」
流燈 「思い当たる事はありますけど、椿はんの顔見ぃひん事には何とも言えまへん」
蓮太郎「今日来たって事は、登楼(あが)るんですよね」
流燈 「登楼(あが)ります。んー、今日はワシ、酒飲むんをやめますわ」
蓮太郎「飲まないんですか?」
流燈 「せやから座敷に酒出さんといてくらはります?」
蓮太郎「え」
流燈 「女将に言うときます。今日は飲む気分やないと」
蓮太郎「え・・・、と。それ、椿に振られるかもしれませんよ?」
流燈 「椿はんが大酒のみやからでっしゃろ? そないなもん客に合わせるんが当たり前や」
蓮太郎「それは、まぁ、そうですが。じゃあ、何を飲むんですか?」
流燈 「煎茶でも出しといておくれやす」
蓮太郎「・・・、座敷で、・・・煎、茶??」
流燈 「それより蓮太郎さん、知っとります? 今江戸で流行っとる酷い風邪」
蓮太郎「風邪? って・・・? 風邪」
流燈 「ねんころ風邪言いまんのや。冬に流行る病で酷い熱と痛風(つうふう)の様な体の痛みがあるっちゅう話どす」
蓮太郎「ふざけた名前ですね、ねんころって」
流燈 「枕が上がらん状態の子に歌う『ねんねんころり』から付けた名前や」
蓮太郎「子供が罹るんですか?」
流燈 「子供に拘わらず、どすわ。既に何万人も亡しになったいうて聞いとります」
蓮太郎「そんなに、亡くなったんですか」
流燈 「江戸では、棺桶が足りず普通の桶で遺体を運ぶ有り様どす」
蓮太郎「離れているとはいえ怖いですね。江戸から上ってきた人には近付かない方がいいという事ですか」
流燈 「遣り手はんにも伝えてときますわ」
蓮太郎「予防、って出来ますか?」
流燈 「ほなら、これ使いなはれ」
蓮太郎「・・・? これは? 四角い」
流燈 「サボン、言います」(※サボン=石鹸)
蓮太郎「・・・?! サボンってポルトガルからの輸入品じゃないですか」
流燈 「水で濡らして表面撫でて手や顔洗う時に使こておくれやす」
蓮太郎「こんな高値(こうじき)なもの戴けません」
流燈 「命に代えられるもんありまへん。蓮太郎さんも十分に気を付けなはれ」

 

蓮太郎「はーーーーー・・・。嘘吐く訳に行かないから、もう絶対バレたよな、これ。司波(しば)先生に隠すのは無理だ」

 

菫   「・・・、椿姐さん。今日・・・、お座敷お休みしたい・・・」
椿   「ん・・・、なんで?」
菫   「頭が、痛くて・・・、なんか、熱っぽいのかな? ・・・、寒気が、する・・・」
椿   「頭が痛い? 熱っぽいって・・・、菫。なんぞ嫌な事がありんしたか?」
菫   「ん・・・、と、仮病・・・、じゃなくて、本当に・・・。足が痛い」
椿   「足が痛い? さっき頭って言ってたじゃありんせんか? おかしな事言いんすな」
菫   「ん・・・、けど・・・」
椿   「もう流燈先生は座敷に登楼(あが)っておりんす。お医者様関連の方が沢山見えんすに、おきちゃの一人でも捕まえてから休みなんし」
菫   「あ・・・、あい・・・」
椿   「百合も白詰も宇津木も撫子や茜も座敷の準備が終わっておりんす。年長のおんしがそんなでは他の妹に示しがつかん。早よ支度しや」
菫   「あい・・・」
椿   「全く、もうすぐ初見世だというのに紅も上手に引けんのか。貸しや」
菫   「ごめん・・・、なんし」
椿   「顔をあげて。菫は色が白いから桜色の紅が良く似合う。内八文字は間に合わなかったけど外八文字はなんとか踏める。初見世のおきちゃはお江戸寄りの方だから大丈夫でありんす」
菫   「あい」
椿   「江戸小紋の仕掛けも夕方届きんした。惣一郎様が伝手を持って仕立ててくんなんした。そんな頼りない事言ってはなりんせんよ?」
菫   「あい・・・、ごめんなんし」
椿   「さ、お座敷に行きんしょう」

 

椿   「は? お茶?」
流燈  「お茶どす」
椿   「ふふっ、ご冗談をおっしゃいんす。そこの若衆、酒を運んできなんし」
流燈  「要りまへん」
椿   「他にお医者様や薬屋様を接待なさるんに酒がないでは皆困りんす」
流燈  「椿はん、まさか・・・、茶ぁ点てられへんのかいな?」
椿   「む・・・、お茶くらい点てられんす」
流燈  「ほな、お点前見せてくんなはれ。お茶言うんは解毒の作用もあって体によろしおすえ?」
椿   「ほんに変わったお方でございんす。菫、百合、お点前の準備を。そこの若衆、茶釜(ちゃがま)に火を入れなんし。白詰、菫と百合の手伝いをしや。宇津木と茜、きちんと見ておきなんし」
菫   「あい・・・」
流燈  「朱色の帛紗(ふくさ)は表千家(おもてせんけ)どすな。いい茶器(ちゃき)も揃えてはります」
椿   「それでは、華屋お職椿、司波(しば)流燈先生にご一服立てさせて戴きんす」
流燈  「お茶言うんは背ぇに一本筋が通ったよな気持ちにさせてくれます。茶釜(ちゃがま)のしゅんしゅん言う音、無駄のない帛紗(ふくさ)捌(さば)き、柄杓(ひしゃく)を持つ手ぇの綺麗さ、座敷言うんは酒飲んで騒ぐだけのもんちゃいます。たまにこないな雅(みやび)な席があってもよろし思います」
椿   「上方ならではのお考えでござりんす」
流燈  「江戸っちゅうんはいつでも騒がし所や思いますわ」
椿   「賑やかなのもいいと思いんすよ」
流燈  「物の受け取り方どすな・・・。ところで椿はん、あんさん松川屋の身請(みう)けを断りはったいうてほんまどす?」
椿   「・・・、どこで聞きつけてきんすか」
流燈  「そら初見世奪われた敵(かたき)やし、思う所もあります」
椿   「流燈先生までそんな話を持ち出すなんて言いんせんな?」
流燈  「椿はん困らせる積もりはあらしまへん。確実にワシのとこに来る言わはるんなら一万両でも二万両でも出します」
椿   「絶対金銭感覚狂ってる・・・」
流燈  「生き甲斐っちゅうんはなんぼ出しても手に入れたいもんどす。椿はんかて一万両を袖にする度胸があらはるやろ」
椿   「流燈先生? ご自分の座敷でそんな風に他のおきちゃのお話をするなんわっちを試しておいででありんすか?」
流燈  「せやな、変に探りいれてもしゃあない」
椿   「身請けを断ったのに他意はありんせんよ? これで二度目」
流燈  「二度? 松川屋はんも懲りんお人ですわ」
椿   「中引けでござんすよ。褥に参りんしょう?」

 

 

 

 

流燈  「新造出しは確か十四の時でしたな」
椿   「もう、六年も経ちんした」
流燈  「あんころの少女がこないに色気纏うとは思いもせんかったわ。女はほんに化けもんや」
椿   「酷い仰り様・・・。流燈せんせ・・・」
流燈  「今日は、やめときまひょか。椿はん、横になって寝なはれ」
椿   「え? な、なんで? 何か、粗相しんしたか?」
流燈  「粗相・・・、いや、ちゃうな。椿はん、あんさん孕(はら)んどらはるやろ」
椿   「・・・っ?! ・・・、ぁ、え、と・・・、そんな筈・・・」
流燈  「ただでさえ嘘が苦手な癖に医者にそないな嘘つくんかいな」
椿   「あの、・・・つわりも収まったし、その、どうして」
流燈  「何しはるんも腹(はら)庇(かぼ)てはる。座るんにしても立つんにしても気ぃの付け方が身重の所作や。今、脈診(みゃくしん)して確定どすわ」
椿   「・・・っ、そんな、簡単に判っちゃうものなの?」
流燈  「顔で判ります。けど脈取るまでと思て褥入りました。三ヶ月過ぎとります」
椿   「そんな事まで・・・」
流燈  「産む気どすな?」
椿   「お母さんに、言う?」
流燈  「ワシは女郎かて女や思てます。赤さん産んだらあかんなんぞとはいいしまへん。せやから、ゆっくり寝て休まなあきまへん」
椿   「流燈先生・・・」
流燈  「おめでとさん」
椿   「・・・っ! おめでとう・・・、なんて・・・」
流燈  「誰も言わはりませんやろ。せやから、ワシが言わんでどないや思てな」
椿   「・・・っ! ぅ・・・、ふ、・・・っ」
流燈  「母親になる人がそない簡単に泣いたらあきまへん。とにかく、しっかり休んでしっかり食べる。蓮太郎さんは知っとらはるやろ。食事のあれこれ伝えときますわ」
椿   「ありがとう・・・、ございます」
流燈  「いまからやと初秋(しょしゅう)頃(ころ)でっしゃろ? ちょくちょく診に来ますわ」
椿   「流燈先生が付いててくれるなんて心強い」
流燈  「心細かったんちゃいますか? 毎度毎度大事な時に江戸に呼ばれる。間ぁの悪いことや」
椿   「・・・、なんか・・・、座敷の方が騒がしい? ん?」
流燈  「ほんまや、なんやあったんかいな」
椿   「失礼致しんす。菫? 百合、そんな騒いでどなんしんした? ・・・っ?! 菫?!」
菫   「つ・・・、ばき、姐、さん・・・。ごめん、なさ・・・。茶釜(ちゃがま)・・・、ひっかけ・・・」
椿   「そんなのどうでもいい! 火傷は? してない? ・・・っ?! 菫・・・?」
流燈  「どないしはったん・・・? ・・・っ?! 菫はん?」
椿   「やだ・・・、熱が、すごい」
流燈  「熱・・・? 椿はん! 離れておくれやす!」
椿   「え?」
菫   「はぁ・・・、は、・・・頭・・・、が、体が・・・。痛・・・、い」
流燈  「これは・・・っ! みんな部屋から出なはれ!」
椿   「先生・・・?」
流燈  「椿はん、近付いたらあきまへん! 奥座敷連れて行きます。そこの若衆はん、氷水と氷嚢(ひょうのう)三つ、用意してくんなはれ」
椿   「な、なんで・・・? え?」
流燈  「椿はん、蓮太郎さんとこ行って、サボン使こて、手ぇと顔洗て、うがいしたら着物全部着替えなはれ」
椿   「あ・・・、あい・・・」

 

椿   「ねんころ風邪? って、何?」
流燈  「今、江戸で流行とる風邪どす。一口に風邪言うても症状はいくつもあります。このねんころ風邪言うんは急に高い熱が出はって体の節々が痛み、小さい子はひきつけ起こして死にます」
椿   「死ぬって・・・、菫が・・・?」
流燈  「感染(うつ)りやすい風邪やから、傍(はた)におって体力のないもんから順番に確実に殺しに来る厄介な風邪どすわ。年寄りや子供が罹(かか)ればまず助かりまへん。同じく、身重のおなごは流産しますし母体も危ない」
蓮太郎 「だから椿を先に避難させたんですね」
流燈  「けど、江戸から届くんはまだ早い。どっから持ち込んだか判りまへん」
蓮太郎 「椿・・・、菫さんの間夫は」
椿   「・・・、江戸のお姉さんの所から、帰って来たって。土産の簪を貰った・・・、って」
蓮太郎 「・・・ごめん、椿。負担を掛けたくなくて・・・、黙ってた」
椿   「黙ってた? ・・・、って?」
蓮太郎 「俺が会いに行った時には、公彦って同心は亡くなってた」
椿   「・・・? 蓮太郎、真面目で優しそうな人だって、言ったよね・・・?」
蓮太郎 「俺も話でしか聞いていない。前日に岡崎宿(じゅく)の療養所で亡くなったそうだ・・・、多分ねんころ風邪で」
椿   「そんな・・・」
流燈  「こないな風邪が九年前にも流行りました。そん時はお七(しち)風邪(かぜ)言わはったそうどす」
椿   「ねぇ、流燈先生・・・、菫、助かるよね? ねぇ、先生!」
流燈  「・・・っ! なんとも言えまへんのや」
椿   「助けてよ! お金なら出すから! 治療代でも薬代でもなんでも! 菫を助けて!」
蓮太郎 「無茶を言うな椿。いくら医者だって言っても限度がある!」
流燈  「薬はありまへん!」
椿   「・・・薬が、ない?」
流燈  「こん風邪に効く薬がありまへんのや。あったらこないに広がる前に助けとります!」
椿   「看病する」
蓮太郎 「何言ってるんだ、椿! さっき聞いただろう!」
椿   「菫はあたしの初めての妹なのよ!」
蓮太郎 「じゃあ腹の子を殺す気か! 椿自身だって危ないんだぞ!」
椿   「じゃあ、放っとけっていうの? 出来る訳ないじゃない!」
蓮太郎 「いい加減にしろ! 女将だって許す訳がない! 奥座敷に放っておくしか出来ない!」
椿   「あんなに熱が高くて苦しそうだったのに、放っておくの?!」
蓮太郎 「そうするしかないだろう! いつもいつも無茶して、牡丹花魁の時だってどれだけ無理を通したと思ってる!菫さんの風邪は感染ったら椿が死ぬかもしれないんだぞ!」

椿:ぱーん(手を叩く等で表現して下さい)

椿   「そういう・・・、蓮太郎のあたしさえ無事なら他はどうなってもいいっていう所大っ嫌い!!」
蓮太郎 「・・・っ!」
流燈  「ワシが付いて看病させますわ」
蓮太郎 「司波(しば)・・・、先生?」
流燈  「椿はんが言い出したら聞かん事一番よう判ってはりますやろ」
蓮太郎 「でも」
流燈  「椿はんは守ります。それでええでっしゃろ」
蓮太郎 「司波(しば)先生は、大丈夫なんですか?」
流燈  「医者も常に命懸けですわ。けどま、大概大丈夫です」
椿   「じゃあ、菫の所に行く」
流燈  「待ちなはれ。誰がそのまま行ってもいい言いました」
椿   「・・・?」
流燈  「看病は一緒にします。けど、椿はん、それには条件があります。それ守らんなら今回は諦めておくれやす」
椿   「条件、って・・・?」
流燈  「菫はんがどれだけ重篤でも、子の刻から明け六ツまでは必ず別の部屋で寝なはれ。それから、食事もきちんと食べなはれ。ええどすな?」
椿   「・・・はい」
流燈  「それから、頭が痛い、体のどっか痛い、疲れた、だるい、そないな異変感じたら看病は打ち切りどす。椿はんが養生する事や」
椿   「・・・、はい」
流燈  「海の向こうでは病魔は口から入る言われます。口と鼻を布で隠して、部屋から出たら必ず着替える、手と顔をサボンで洗ってうがいをする」
蓮太郎 「俺に・・・、何が出来ますか」
流燈  「まず、椿はんにはたかれたほっぺた冷やしなはれ」
蓮太郎 「・・・、そうじゃなくて」
流燈  「栄養のある食事を椿はんとワシに用意してくんなはれ。内容は後で書きます。それと、塩と砂糖にゆずの汁を少し溶かした水を沢山作って貰います」
蓮太郎 「判りました」
流燈  「それと、氷嚢(ひょうのう)は常に要ります」
蓮太郎 「今の時期ならまだ氷もそれほど難しくないので大丈夫です」

 

菫   「・・・つ・・・、ばき・・・、姐さん。はぁ・・・、はぁ・・・、は・・・」
椿   「大丈夫よ、菫。ちゃんと治るから、ちょっと冷たいけど、我慢してね」
菫   「ひゃ・・・、ん、うう・・・」
流燈  「熱が高い。両脇とうなじの下に氷嚢(ひょうのう)置きます。足元は湯たんぽであっためまひょか」
菫   「はぁ・・・、痛い・・・、痛い」
椿   「どこが? 痛い・・・?」
菫   「足が・・・、痛い」
流燈  「一番痛いんが足でっしゃろ。全身痛いんが判れへんようならはっとる」
椿   「そんなに・・・」
菫   「つ・・・、ばき・・・、姐さん・・・、ご、めん、ね」
椿   「何が?」
菫   「初・・・、見世、の用意・・・、して、くれたのに・・・、あたし・・・、あたし」
椿   「・・・っ! 何言ってるの!? 菫!」
流燈  「・・・、椿はん・・・」
椿   「先生、なに・・・?」
流燈  「あきまへん・・・、もう、こないなっては見込みあらしまへん」
椿   「どうして? まだ、喋れてるじゃない! ちゃんと、痛いって教えてくれてる」
流燈  「頭に、病の毒が入っとります・・・。せやから、訳判らん事言わはるんどす」
椿   「そんなの・・・、菫! 菫? しっかりして!」
流燈  「目ぇが、虚ろになっとります。もう・・・、無理なんどす、椿はん」
菫   「八・・・、文字・・・、ちゃんと、踏め・・・なくて、ごめん・・・、なさ・・・い」
椿   「やだ、菫! 菫ぇ!」
菫   「こ・・・、もん・・・、着たかった・・・、な・・・。紫、の」
椿   「治ったら着られるのよ?! なんで諦めちゃうの? ダメだよ!」
菫   「高・・・、下駄は・・・、いつもと・・・、見える景色が、違って・・・、仲ノ町が綺麗に・・・、見える、の」
椿   「菫・・・? ねぇ・・・、どこで八文字踏んでる・・・の?」
菫   「大・・・、門、の・・・、むこ・・・、は・・・、こんな、きれ・・・い。あ・・・、公彦(きみひこ)さん・・、が、い、る」
椿   「菫? 菫!!」
菫   「お・・・、花が・・・、咲いて・・・、て・・・」
椿   「菫!! どこに向かって八文字踏んでるの!! そっちに行ったらダメ!! 帰って来て!」
菫   「あぁ・・・、ふふ・・・、・・・き・・・」
椿   「菫・・・? 菫・・・、すみ・・・」
菫   「・・・」
椿   「・・・っ、・・・菫・・・、流燈先生!! 菫を助けて!」
流燈  「・・・、堪忍な・・・、椿はん」
椿   「お医者様でしょう?! どうして助けてくれないの?! なんでよ!!」
流燈  「堪忍な・・・、椿はん・・・、堪忍して、おくれやす・・・。ワシはこないに力あれへんのや」
椿   「嫌・・・、いや!! 菫ぇえぇえぇえええええええ!!! いやああああああああ!!!」

 

蓮太郎 「こんなにも、進行の早い・・・、病気なんですね」
流燈  「熱が出始めて二日が峠の病どす。それさえ越えれば大抵は大丈夫なんどすが、今回の様に頭ん中に病の毒が入った場合は助かっても、生きて行くんは難しいんどす」
蓮太郎 「椿は・・・、部屋から出て来ないんですか?」
流燈  「遺体から、離れまへん」
蓮太郎 「部屋に、行っても大丈夫ですか?」
流燈  「念の為、口と鼻、塞いで下さい」
蓮太郎 「もうすぐ、弔い衆が来ます。椿を引き剥がさないと」

 

蓮太郎 「椿・・・?」
椿   「菫に、紅を引いてあげてたの。この子いつまで経っても紅を引くのが苦手でね。八文字を踏みながら行くのに紅も引かないままなんて、あんまりみすぼらしいから」
蓮太郎 「そうか」
椿   「・・・ねぇ、蓮太郎、なんで・・・?」
蓮太郎 「ごめん、俺は、何も言えない」
椿   「なんでこんなに簡単に死んじゃうの? みんな、みんな・・・。まるで死ぬ為に生きてるみたい」
蓮太郎 「そうじゃない」
椿   「頭が痛いって言ってたの」
蓮太郎 「菫さんが?」
椿   「座敷の前に足も痛いって・・・!! あの時あたしがちゃんと気付いていれば生きれたかもしれないのに!!」
蓮太郎 「違う・・・、椿のせいじゃない」
椿   「もう、見送るの、やだよ!!」
蓮太郎 「それは、きっと難しい・・・」
椿   「蓮太郎は、死なないよね?」
蓮太郎 「・・・、俺は、大丈夫だ」
椿   「蓮太郎は、あたしより先に死なないで」
蓮太郎 「酷いな・・・。それは俺に椿の死を見ろって事だ」
椿   「それでも・・・、もう、こんなのやだ、だから」
蓮太郎 「判った。約束する。・・・、弔い衆だ。部屋から出よう」
椿   「やだ、棺桶に入って送り出されるのを見る」
蓮太郎 「ダメだ」
椿   「どうして・・・?」
蓮太郎 「牡丹花魁の時も外に出ただろう?」
椿   「最後まで見送りたい」
蓮太郎 「棺桶は・・・、小さい」
椿   「え・・・?」
蓮太郎 「死んで固くなった遺体を入れる為に、足も腕も折るんだ! だから、見るな」
椿   「なんで・・・? なんで、よ、どうして死んでまでそんな事されないといけないの?! 何でよ!!!」
蓮太郎 「椿! 見るな! 音を、聞くな!」
椿   「いや! 菫に触らないで! なんでそんなひどい事するのよ!! いやぁあぁあぁああ!!」

 

 

 

 

流燈  「椿はんは、どないでっしゃろ」
蓮太郎 「泣きやみはしましたが、放心しています」
流燈  「牡丹花魁に続いて妹の菫はんや。よう、腹の子が流れんかったと、それだけが救いどす」
蓮太郎 「感染った可能性は、ないんですか?」
流燈  「判りまへん。七日は気ぃ付けなあきまへん。気力が削がれとります」
蓮太郎 「少し、安静にさせてあげたくても見世がそれを許さない」
流燈  「今日くらいはワシが椿はんのとこに登楼(あが)るんは出来ます。けど、それ以上は無理どすわ」
蓮太郎 「・・・、幕府への貢納金が増えた、と聞きました」
流燈  「ワシも江戸行って確かめました。公方はんが子仰山作り過ぎて大奥がえらい事にならはっとるらしいどすわ」
蓮太郎 「数人子供が増えたからってそんなに逼迫するものですか? 大奥が」
流燈  「ワシが江戸から帰って来る時の数えでは二十七人のお子さんがおらはりました。孕んどる女中さんも仰山おりました」
蓮太郎 「呑気ですね・・・。不謹慎だとは思います。ですが妹が一人減りました」
流燈  「椿はん一人で六人も見てはったんやな・・・。女将はんが躍起にならはるんは判りますけど、無理が過ぎますわ」
蓮太郎 「早く、何とかしないと」
流燈  「蓮太郎さんも、急いては事を仕損じます。焦り過ぎんよう、気ぃ付けなはれ」
蓮太郎 「気を付けます」

 

 

流燈(M) 「遥か後の話になりますが、このお七(しち)風邪(かぜ)、ねんころ風邪と言われる感冒症は、海の向こうではインフルエンザ言われるもので、長い間治療法はなく、歴史の中でも度々猛威を振るい、徳川幕府のある江戸時代だけでも二十七回も流行らせ、その度に十万人近くの命を奪わはった、と言われとります。」