花魁道中いろは唄~十葉~ 咎無くて死す ♂×4 ♀×4 / 白鷹

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所要時間:70分程度
利用規約をお読みいただきご利用下さい。

2019/3/2 利用規約を改訂しました。必ず読んでから上演をお願いいたします。

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◆登場人物◆

竜胆  (りんどう)  ♀ 17歳

    4代前のお職椿花魁が産んだ娘。
    女将が大切にして、引込み禿から振袖新造を経て初見世を迎える。
    子供らしさは備わっておらず、物事の先読みをして楼閣内をうまく立ち回って行く少女。


 

女将  (おかみ)  ♀ 48歳

    若山遊郭一の大見世、華屋の女将。
    自分自身の欲に対する自制心は全くなく、欲しいものを思うように壟断し自分の欲を満たしていく。
    その為の犠牲は何一ついとう事はない。感情の起伏の激しい女性。


 

蓮太郎  (れんたろう)  ♂ 37歳

 

    既に亡くなっている竜胆の母親、椿を心から愛し、その約束を果たす為に生きる男性
    竜胆を自分の娘のようにかわいがっている。
    生真面目で誠実な男性だが、生き抜くための手段としてある試みをし今に至る。 

 

 

木蓮  (もくれん)  ♀ 23歳

    現在の華屋お職。今まで受け継がれてきたお職の筋が百合の突然死により切れてしまったので、
    二番煎じのお職の筋からその位置にいる。
    我儘でお職としての自覚はとても薄く、だらだらした毎日を何となく送り続けている。
    女郎になった事に疑問を持つことも、また責任感を持つ事も無い。


睡蓮  (すいれん)  ♀ 19歳

 

    非常に繊細で美しい顔立ちをしていた為、人攫いに合い無理やり女郎にされてしまった
    同郷の竜二郎が偶然道中で睡蓮を見掛けて以来、
    睡蓮は竜二郎と心も体も繋がりを持ち密かに間夫にしている
    女将に対しては常に反抗的で、いつか逃げ出してやろうと考えている。本来は情に厚く優しい女性。


 

新之助 (しんのすけ)  ♂ 42歳

 

    大名、阿部家の当主であり、華屋の馴染みとして遊郭に通っている。
    真面目で正義感が強く若くして当主になったため責任感もある。反面とても優しく情にもろい。


 

竜二郎 (りゅうじろう)  ♂ 20歳

 

    睡蓮の同郷の出で若山の近くにある茶屋で住み込みの手伝いをしている青年。
    睡蓮とは将来を誓い合った仲でありとても大切にしている。


 

秋吉  (あきよし)  ♂ 25歳

 

    華屋の若衆。花魁と肌を重ねることはご法度だと知りながら、遣り手や女将の目を掻い潜っては華屋の女たちをもてあそぶ。
    仕事は非常に不真面目で、花魁の仕事中などは外でサボっている事もしばしば。
    無気力でどこかだらけきっている。


 

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役表

竜胆  (♀)・・・
女将  (♀)・・・
連太郎 (♂)・・・
新之助 (♂)・・・
木蓮  (♀)・・・
睡蓮  (♀)・・・
竜二郎 (♂)・・・
秋吉  (♂)・・・

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◆◆◆華屋・集合食堂◆◆◆

 

 

女将  「木蓮!昼見世に客が付かなかったんだから、いつまでも襦袢でダラダラしてんじゃないよ!
    湯を使って夜見世の準備に身ぃ入れな!

    睡蓮!こんの間夫狂いが!昨夜の客が中引け前に帰っちまったらしいじゃないかい!
    間夫を洗い出して袋叩きにされたくなきゃ仕事に身ぃ入れな!
    杜若!まったあんた無駄遣いして借金増やして!
    いくら化粧を濃くしたって元の出来が大して良いわけじゃないんだから相応にしときな。
    お面かぶってるんじゃあるまいし化粧で型ができちまうよ!
    皐月!客の入りを遣り手任せにしてないで馴染みをもっと増やしな!
    今月またお茶挽きが増えたら見世替えするからその積もりでいな!
    山茶花!お前客の前で酔っ払いすぎんじゃないよ!
    酔い潰れてまともに床入りができなかったって、客に詫び入れなきゃいけない私の立場も考えな!」

木蓮  「うーわ、まーった今日もお母さんの機嫌最悪でありんすな」

睡蓮  「人に間夫狂いとか言えた口じゃねぇだろ。萎びたババァの癖に間夫作ってさ」

女将  「聞こえてんだよ、睡蓮!」

睡蓮  「聞こえるように言ったんだよ!クソババア!!」

女将  「口は悪いし、やる気はないし、最近の女と来たら甘え腐って!
    せめてもう少し器量良しならその上に胡座かくって事もあるんだろうけど、
    見目のいい娘が少なくなっちまったねぇ」

木蓮  「お母さんはもう少し言葉を選んでくんなまし。あっちらにもそれなりの自尊心はありんす」

女将  「なんだい木蓮、いい女がいないから仕方なくお職の肩書きを持ってるんだよ。
    勘違いして偉そうな事を言うんじゃないよ」

木蓮  「・・・っ」

女将  「竜胆の初見世が終わったら身の振り方を考えておくんだね。今の救いはあの子だけだよ」

蓮太郎 「女将、蓮太郎、京より戻りました」

木蓮  「蓮太郎さん!」

睡蓮  「はぁ〜〜。蓮太郎さんが帰って来ればお母さんの機嫌が良くなるわ」

蓮太郎 「木蓮花魁。・・・っ、身支度を早く整えないと」

木蓮  「何さ、おんしまでお母さんみたいに口うるさくなったんでありんすか?」

蓮太郎 「いえ、襦袢でうろつかれると目のやり場に困るので」

木蓮  「やだよ、もう・・・っ」

女将  「蓮太郎、おかえり。わざわざ京まで使いに行かせて済まなかったねぇ。後で冷やし飴でも食べに行こう」

蓮太郎 「いえ、湯を使わせていただければすぐに台所に戻ります」

女将  「そんな堅い事言わないで、少し休みな。疲れたろう?」

睡蓮  「なんだい、あの変わりよう。気持ち悪っ」

蓮太郎 「いえ、籠を使っていいとの事でしたので遠慮無く使わせていただきました。
    ですからそれほど疲れてはいません」

木蓮  「湯を使うならあちきが背中を流してさしあげんしょうか?」

蓮太郎 「湯女のような誘い方をすると女将さんに怒られますよ。
    あ、買ってきたんで皆さんでどうぞ」

睡蓮  「草餅!いいね、薄茶でも入れて食べよう」

木蓮  「相変わらずの男前っていうか、色男っていうか美形だよねー。一度でいいから抱かれてみたい」

睡蓮  「色男は認めるけどお母さんの間夫じゃね、手出しできないだろ」

木蓮  「お母さんの間夫じゃ無くても若衆と寝たりしたら手打ちだよ」

睡蓮  「それな。なんでお母さんはいい訳?ちぃとあっちらをバカにしてると思いんせんか」

竜胆  「女将さんはあっちらをバカにしてるのではありんせん。自分の欲望に忠実なだけでありんす」

睡蓮  「竜胆!どっから湧いて出たんだい!びっくりするじゃないか!」

竜胆  「んむんむ、草餅美味しい」

木蓮  「そういうの、腹が立ちんせんか?竜胆だって蓮太郎さんの事好いているんじゃないのかい」

竜胆  「好いてはおりんす。けんど、蓮太郎は好いても無駄でありんす。一途な人でありんすから」

睡蓮  「お母さんにかい?全くあんなババァのどこがいいんだか」

木蓮  「手を出せるおなごがお母さんしかおらんかったってだけな気もしんすけんど」

睡蓮  「竜胆なら蓮太郎を奪えるんじゃないのかい?あんた綺麗な顔してるしさ」

竜胆  「むぐむぐ・・・、姐さん方、草餅なくなりんすよ?」

木蓮  「何一人で黙々と食べてるんでありんすか!」

睡蓮  「この食い気しかない子が競りに出されてとんでもない事になってるなんて信じられないね」

竜胆  「お稽古があるんで失礼致しんす」

睡蓮  「元は手毬屋にいた番頭新造の淡墨を
    竜胆のしつけの為だけにわざわざ見世替えさせたってんだから、
    お母さんの入れ込みようは凄いもんがあるね」

木蓮  「確かに綺麗な顔をしているよ。恐ろしいほど、ね」

 


 

◆◆◆台所◆◆◆


竜胆  「蓮太郎」

蓮太郎 「竜胆、どうした?」

竜胆  「お疲れ様」

蓮太郎 「ん?」

竜胆  「女将さんの相手。さっきまで付き合っとりんしたんしょ?」

蓮太郎 「ははは、まぁ、な。年の割にお盛んで参るよ。やっと寝てくれた」

竜胆  「じゃあ、しばらくは起きては来んせんな。
    姐さん達も仕事でありんすから、ちぃとだけ蓮太郎を独占できんす」

蓮太郎 「いいのか姐さんがたの仕事を見に行かなくて」

竜胆  「毎度、なんも代わり映えせんもんを見ても学べる事なんありんせん。
    蓮太郎こそ、こんな夜中に一人で鏡を見続けて、
    その鏡が母の形代だと知らん人が見たら自己陶酔してる様に見えしゃんす」

蓮太郎 「自己陶酔・・・って。・・・、竜胆は、もうすぐ、初見世か」

竜胆  「明後日でありんす」

蓮太郎 「本当に椿の初見世の仕掛けを使うのか?女将は仕立てる積もりでいたらしいが」

竜胆  「女将の選ぶ反物は派手で見せ掛けばかりの薄っぺらいモノでありんす。
    母の仕掛け程に美しい仕掛けをあちきは見つけられん。母の仕掛けがいいでありんす」

蓮太郎 「竜胆には似合うだろう」

竜胆  「あの仕掛け以外で初見世を迎える積もりはありんせん」

蓮太郎 「竜胆は落ち着いているんだな」

竜胆  「いずれは迎えるもんでありんす。母は、どんな初見世を迎えたんでありんしょうか?」

蓮太郎 「ああ、布団部屋に隠れて怖い怖いと泣いていたよ」

竜胆  「?!母が、でありんすか?」

蓮太郎 「理想と違ったか」

竜胆  「もっと、毅然と迎えたのかと思っておりんした」

蓮太郎 「毅然と、と言うかめげなかったよな」

竜胆  「蓮太郎から聞く母の話は好きでありんす」

蓮太郎 「竜胆は、椿が好きか」

竜胆  「あちきは母を面影すら覚えてはおりんせん。
    けんど、あちきを身ごもった時、女将さんに隠して隠して無茶を承知で産んでくれた、
    と蓮太郎から聞きんした。嫌いになる筈がありんせん」

蓮太郎 「子供らしい可愛らしさも、色香もしなやかさも芯の通った強さも全部持ち合わせた様な人だったよ。
    顔は、お前によく似てる。少し竜胆の方がきつい顔立ちをしているかな?」

竜胆  「本当に、思い慕っていたのでありんすな」

蓮太郎 「ああ、誰よりも、今でも、きっと死んで果てても俺が想いを馳せるのは椿だけだ」

竜胆  「足抜けは考えなかったんでありんすか?」

蓮太郎 「俺はそうする事を望んだ。けど、椿は自分達の想いよりもっと大きなモノを見据えてそれを拒んだ」

竜胆  「大きな、モノ・・・、でありんすか?」

蓮太郎 「部屋に戻ったら、窓際の真ん中にある畳の下を見てごらん。竜胆へ椿からの手紙がある」

竜胆  「母からの?」

蓮太郎 「お前に手紙を渡す事が、俺に対しての椿の遺言だった。
    ・・・だが、それだけで終わらない気がする。 
    読み終わったら、何が書いてあったのか、お前が何を思ったか教えて欲しい」

竜胆  「母からの手紙」

蓮太郎 「くれぐれも女将には悟られない様にするんだ」

竜胆  「判っておりんす。母を死に追いやったのが女将だという事はいくらあちきでも判りんす」

蓮太郎 「気付いて、いたのか」

竜胆  「深い理由までは判りんせん。
    けんど、母の遺言を守る為には生き延びねばならん。
    蓮太郎が女将の間夫になったのも己の命を守る為だという事くらい知っておりんす」

蓮太郎 「は・・・、はは・・・。さすが、椿の娘、だな。良く頭が回る」

竜胆  「蓮太郎、ここまで来たんじゃ、あちきと蓮太郎は一蓮托生。まんだ、死んではなりんせんのぇ?」

蓮太郎 「釘を刺されたな。判っている」

 


 

◆明後日――――


竜胆  「阿部新之助様。本日は突き出しのお申し入れをいただきましてありがとうございんす。
    不束者でございんすので、どうぞご指南のほどよろしくお頼み申し上げんす」

新之助 「そなたが竜胆か。なるほど、話には聞いておったが、驚く程椿に似ておるな。
    生き返ってきたのかと思うたぞ」

竜胆  「生前は、母が大変お世話になりんしたとの事。重ねて御礼申し上げんす」

新之助 「世話になったのはワシの方じゃ。
    ワシは、惚れたおなごを次々に亡くす星の下に生まれておるらしいからの。
    余り身を入れて惚れさせるでないぞ?」

竜胆  「母に心を遣っておいででありんしたか」

新之助 「始めはの、椿の姐花魁であった牡丹に惚れておったのじゃ。
    じゃが、逢う前に亡くしてしもうてな、椿は牡丹の話をワシに一生懸命聞かせてくれたんじゃ。
    その健気な心に打たれての、気が付いたら惚れておった」

竜胆  「さようにございんしたか。母は、阿部様のお気持ちをご存知で?」

新之助 「それまた、知らせる前に亡しになってしもうた」

竜胆  「・・・、あちきでは変わりは務まりませんが、阿部様のお慰みになればと」

新之助 「慰めなどと申すでない。そなたはそなた。椿でも牡丹でもない。
    人の変わりなどどこにもおらんのじゃ、こちらへ参れ、竜胆」

竜胆  「いえ、阿部様。床に参りんしょう」

新之助 「そうじゃの」

 


 

◆◆◆華屋・木蓮の部屋◆◆◆


木蓮  「(煙草吸って吐く)久し振りに気を遣りんした。秋吉の手練手管には参りんす」

秋吉  「寄せよ。客じゃあるめぇし、おべんちゃらなんて必要ねぇよ。
    あぁ、木蓮、俺にも一服くれや」

木蓮  「どんぞ。それこそ客でもないのにお世辞なん言んせん。
    客なんしょぼくれたじじいばっかりで、入れるが早いか果ててしまいんす。
    気を遣るどころじゃありんせん」

秋吉  「ふーーーーっ、そりゃあ楽な客が増えたじゃねぇか」

木蓮  「それより、おんし。山茶花とも寝てるそうじゃありんせんか」

秋吉  「寝たがなんでぇ。葵や皐月とも寝てらぁな。
    蓮太郎が帰ってくりゃあ華屋の風紀なんざ乱れまくりよぉ」

木蓮  「お母さん男日照りでつらそうだったもんねぇ。ずっと蓮太郎から離れやしない」

秋吉  「大した惚れ込みようさ。 おかげで俺達若衆は花魁食いまくり。
    遣り手は昼間っから酒飲んで酔っ払ってる始末。 若山一の大見世が笑っちまうぜぃ」

木蓮  「全く、蓮太郎もあんなババァのどこがいいんだろう?
    熟女好きってったって限度がありんせんか?」

秋吉  「ぶっはぁ、ははは、お前ぇ本気でそんなこと言ってんのかい?」

木蓮  「例えば、金子きんすを貰うにしても、お母さんの言う事は全部はいはい聞いてるじゃありんせんか。
    あの二人のちちくり合いは好いてやってるようにしか見えんせん」

秋吉  「女将もおぼこい女の様にデレデレしちまってるもんなぁ」

木蓮  「蓮太郎が色男なだけに勿体ないったらありゃしない」

秋吉  「なんでぇ、俺じゃ気に入らねぇってのかい?」

木蓮  「鏡を見てみるんだね。蓮太郎の男っぷりの良さはあんたみたいにせこくないよ」

秋吉  「まぁ、俺も最初陰間かと思ったくらいには綺麗な顔してるよな。
    けど、蓮太郎は他に惚れた女がいるってぇ話だぜ?」

木蓮  「え?!な、なんだいそれ!!初耳だよ!どこの女さ?!」

秋吉  「そこまでは俺も知らねぇよ。だがよ、だとすんなら女将にあんな態度とってんのは、
    なんかの下心があるってぇ事にならねぇか?」

木蓮  「なるほど、ね。その理由を調べあげれば、蓮太郎はあちきの思い通りになりそうでありんすな」

秋吉  「俺ぁ蓮太郎の下心の方に興味あらぁな」

木蓮  「なんだい、おんしも蓮太郎の事」

秋吉  「アホかあああああ!!!蓮太郎の下心とやらが女将にとって都合の悪いことだったらよ、
    女将に取り入って俺が蓮太郎の立場をいただくってぇ事も出来らぁな」

木蓮  「はぁーぁ、みんな女将女将って。なんでババァの癖に男受けがいいんだよ」

秋吉  「金だよ、かーね。ババァの部屋にゃあ千両箱が山と積まれてるってぇ話だぜ?
    蓮太郎だってその金目当てかもしんねぇだろ?」

木蓮  「いっそ、その方が納得できんすなぁ」

秋吉  「なぁ木蓮、一緒に調べてみねぇか。蓮太郎の下心とやらをよ」

木蓮  「悪くない話でありんすな、秋吉。協力しんしょう」

 


 

◆数日後――――

 

竜胆  「新之助様、またお会いできるのを心待ちにしておりんした」

新之助 「仕事にこなれて来たのじゃな?竜胆。 そんな言葉がつるりと出てこようとは、少しばかり寂しいぞ」

竜胆  「本当にそう思っておりんした」

新之助 「では、信じる事にしようかの」

竜胆  「二人きりでお耳に入れたい事がございんす(小声)」

新之助 「・・・。むぅ・・・。・・・可愛い事を言いよる。皆下がれ、番頭も新造も、禿もじゃ。
    ワシは竜胆と二人で過ごしたいのじゃ。誰も入ってくるでないぞ?」

 

新之助 「これで、良いか」

竜胆  「ご配慮、ありがたく存じあげんす。まずは新之助様のお目に入れたいものがございんす。
    こちらでございんす」

新之助 「これは・・・!椿の手蹟(て)では無いか!」

竜胆  「やはり、母の手蹟(て)をご存知でいらしゃんしたか」

新之助 「墨の濃き薄し、流れる様なかな文字、武家の姫でもなかなかこれ程の文字を書けるものはおらぬ。
    ワシは椿からの手紙を心待ちにしていたものじゃ」

竜胆  「母が当時心を通わせていた蓮太郎という若衆に、
    あちきが初見世をお迎えする頃に渡して欲しいと残したものでございんす」

新之助 「のう竜胆。ワシはなぜ椿が亡うなったのかを知らぬ。病か?」

竜胆  「自害にございんす」

新之助 「・・・、自害、じゃ、と?」

竜胆  「もし、自害しなければ己の身に振り掛かる災厄を避けては通れぬと、自害したものかと思いんす」

新之助 「災厄、じゃと?一体椿の身の上に何が起こったというのじゃ」

竜胆  「母の姐女郎、牡丹花魁もその災厄に巻き込まれ命を落としたものと思われんす」

新之助 「どういう事じゃ?!場合によっては、ワシはその災厄の元を洗い出して成敗してくれようぞ!」

竜胆  「全ては、その手紙に記されておりんす」


竜胆(M)「そう、全てはその手紙に記されておりんした。 藤花魁が死の間際に残した言葉。
    「女衒(ぜげん)」
    「女将」
    「岡っ引きに駆け込むも女衒に引き渡された」
    「年季明けを迎えて大門から出てすぐに女衒に捕まった」
    「女衒と女将と役所は繋がっている」
    「連れ戻されて逃げたら拷問された」
    「羅生門河岸の長屋切見世で働かされた」

    それらは全て聞いたその場で書き留めたものであろう。生々しい走り書きだった。
    その後、母は女であるその身を武器にして、その薄汚れた若山の犯罪を暴き立てていた。
    幕府公認である若山遊郭。だが、非公認の法がいずれかのうちに出来、
    大義名分を幕府に掲げ、水面下で巨万の富を壟断していたのだ。
    その富を手にするのは華屋女将の筋の者、関わる者には僅かながらの利益がもたらされていた事実。
    幕府に報告される金銭出納帳とは、別に作成されている裏帳簿の存在があるだろう事が予測されるが、
    その所在を突き止めることは出来なかった旨。
    若山にかかる税率を操作して利益を手にする為の重要な手がかりがある事を明確に訴えていた。


新之助 「牡丹も椿もこのような事の為に、死んだと申すか!」

竜胆  「人の欲が渦巻く陰謀の手に掛かり命を取られんした」

新之助 「竜胆、一つ聞くが」

竜胆  「あい」

新之助 「ワシがこの件で幕府側の立場として加担しておる事は考えなんだか」

竜胆  「無論、考えんした。けんど、新之助様は愛する者を己の我欲の為に殺せるお方には見えんせん」

新之助 「出来ぬな」

竜胆  「それ故に新之助様にお伝えしんした」

新之助 「この件、幕府の中に加担する者がおるな」

竜胆  「おそらく、としか」

新之助 「あい分かった」

竜胆  「これからあちきがお伝えしんすはあちきの考えにございんすが、
    牡丹花魁がもし郷で人攫いなどに合わずにおったのならば、新之助様と祝言をあげていたのでは無いかと」

新之助 「無論じゃ」

竜胆  「もし、母椿が女衒に買われずに済んだのならば、加賀任三郎の娘であった母を、
    新之助様は娶る事が出来たのでは無いかと」

新之助 「加賀、じゃと?十八年前改易された加賀の事か」

竜胆  「あい」

新之助 「椿は、そこの娘であったのか」

竜胆  「あい」

新之助 「救えたはずのおなごをワシは・・・、『二度』も救えなかったのじゃな」

竜胆  「新之助様を咎め立てしたいわけではありんせん。
    ただ、人の運命をもてあそぶこの若山を、あっちは許せんのでありんす」

新之助 「竜胆、蓮太郎とはそなたの父か?」

竜胆  「そうであったらと思う事は幾度もありんした。けんど、この若山の女郎、腹の子が誰かなど判りんせん」

新之助 「椿と心を通わせたと申したな」

竜胆  「今でも蓮太郎の心にあるのは母だけでございんす」

新之助 「若衆と会う事は出来るのか?」

竜胆  「お呼びとあらば馳せ参じましょうが、この状況で呼べば女将に怪しまれんす」

新之助 「そうじゃの、では日を改めよう」

 


 

◆◆◆蓮太郎の隠れ部屋◆◆◆


竜二郎 「ここから出しやがれ!てめっ、むぐっ」

蓮太郎 「黙らないなら、また猿ぐつわ噛ませますよ。竜二郎さん」

竜二郎 「おめぇ、誰だ」

蓮太郎 「華屋の若衆で蓮太郎と言います」

竜二郎 「・・・っ、じゃあ、俺は・・・、捕まっちまったのか?」

蓮太郎 「そうですね。睡蓮花魁の間夫を女将が洗い出しにかかったので遅かれ早かれ捕まったでしょう」

竜二郎 「俺は手打ちにされるのか?それとも袋叩きにされて放り出されるのか?」

蓮太郎 「あなたにはしばらくここにいていただきます」

竜二郎 「・・・?手打ちにされるんじゃねぇのか?他の見世じゃ袋叩きにされるって」

蓮太郎 「ここは華屋の中で、俺の隠れ家っていうか、秘密の部屋です。
    この部屋のありかも竜二郎さんの身を匿っている事も人に知られる訳には行かないんです。」

竜二郎 「それって、じゃあ・・・、あんた、俺を助けてくれたのか」

蓮太郎 「はい」

竜二郎 「なんで」

蓮太郎 「まだ、お話しするわけにはいきません。ここで大人しくしていて下さい。食事も運んできます」

竜二郎 「そんな事して、あんた大丈夫なのか?」

蓮太郎 「俺は大丈夫です」

竜二郎 「・・・っ?!お雪!お雪はどうなるんだ!」

蓮太郎 「お雪、とは睡蓮花魁の事でしょうか?」

竜二郎 「お雪は花魁なんかになるような女じゃねぇ!
    俺と所帯持って生きてく筈だったんだ。
    それを勝手にさらって女郎なんかにしやがって!ちくしょう・・・」

蓮太郎 「睡蓮花魁は仕置き部屋に入れられてしばらく放置されるでしょうが命に関わる事はないでしょう」

竜二郎 「なんでっ、そんな事が言い切れるんだ!!」

蓮太郎 「遊郭は簡単に女郎を殺したりしません。大切な金づるですから」

竜二郎 「女を食い物にしてる奴らのいいそうなこったな」

蓮太郎 「生き方を選べるならそれ程幸せな事はないでしょうね」

竜二郎 「お雪と会わせろ。俺はお雪を連れてここから出る」

蓮太郎 「睡蓮花魁とは会えずに、袋叩きにされたいならご自由にどうぞ」

竜二郎 「お前、なんだ」

蓮太郎 「蓮太郎です」

竜二郎 「蓮太郎さんとやら。随分悟ってんだな」

蓮太郎 「俺はこの若山で産まれて育ちましたから、他に生きる方法なんて無かったんですよ」

竜二郎 「惚れて嫁にしたいと思ってた女が女郎にされた苦痛なんざわかりゃしないだろう」

蓮太郎 「惚れた女が既に女郎になるしか術がなく、心を通わせながらも死なせてしまった苦痛なら知ってます」

竜二郎 「・・・っ、て、あんた・・・」

蓮太郎 「今の俺には、考え無しに連れ出そうとする愚か者を匿う事しかできません」

竜二郎 「じゃあ、どうすりゃあいいんだよ。どうすりゃ、お雪をここから連れ出せる」

蓮太郎 「足抜けは成功しません。残念ですが地獄の果てまででも追ってきますよ」

竜二郎 「俺は、他の男にお雪を触れさせたくないんだよ!」

蓮太郎 「お二人でここを抜け出す方法が全く無い訳ではありませんが、今はまだ話す事はできません」

竜二郎 「じゃあこのまま指をくわえて待ってろとでもいうのか」

蓮太郎 「足抜けの手伝いはできますが今はまだ時期ではありません。しばらくここにいて下さい」

竜二郎 「一つ、聞いてもいいか」

蓮太郎 「なんでしょう」

竜二郎 「あんた死なせちまった女の事、後悔してねぇのか」

蓮太郎 「後悔なんてしたら、死んでも祟られますね」

 

 

 

 

 

―――華屋・仕置き部屋―――

竜胆  「睡蓮姐さん、姐さん。しっかりしてくんなまし」

睡蓮  「・・・、ん・・・、ん・・・?」

竜胆  「良かった。気が付いた。竜胆でありんす。判りんすか?」

睡蓮  「竜胆・・・?ここは?あちきは・・・、どうして?」

竜胆  「ここは、仕置き部屋でございんす。姐さんは、いい人と逢引きしてるんを見付かって、
    あんまり騒ぐんで当て身で気を失っていたんでありんす」

睡蓮  「・・・、そう、あちきは・・・、・・・っ、竜二郎!竜二郎は?!」

竜胆  「姐さん、間夫との逢引きを見付かるなん、なんでそんな下手を踏んだんでありんすか?」

睡蓮  「ふた月以上も間無しに客を取らされてずっと会えなかったんだ」

竜胆  「夜見世が始まっても帰って来んかったら、女将さんだって探しに行きんしょう。
    時を忘れる程心を遣ってしまうなん、愚かな真似をしてはなりんせん」

睡蓮  「あんたに何が判るってんだい!人を好いた事なんありんせんおなごに、
    あちきがどれだけ竜二郎を思っていたか判る筈がありんせん!」

竜胆  「判りんせん」

睡蓮  「竜二郎に逢いたい。逢えないならもう、もういっそ殺してくんなまし」

竜胆  「判りんせんけんど、見世の若衆と心を通わせながら何年も触れ合わなかった恋人を知っておりんす。
    姐さん、死ぬ程の覚悟がおありなら、他にできる事がありんせんか?」

睡蓮  「(ハッとする) 竜二郎は?竜二郎はどうなったんでありんすか?」

竜胆  「蓮太郎が握り飯を握ってくれたんでお食べになってくんなまし」

睡蓮  「飯なん食ってる場合じゃありんせん!竜二郎は?」

竜胆  「姐さんがこの握り飯を食べてくれたら教えんしょう」

睡蓮  「竜二郎がどうなったのかわからんのに飯なん喉を通りゃせん」

竜胆  「姐さんは、八日もここに入れられとりんした。
    まずは姐さんが生きとらんと竜二郎さんには会えんのと違いんせんか?」

睡蓮  「・・・、ん、く、んっ。」

竜胆  「水も飲んでくんなまし、こんなに衰弱して。女将さんもひどい事をしんす」

睡蓮  「なんで、竜胆はこんな事をしてくれんのさ?あちきはあんたの姐さんじゃないよ?」

竜胆  「見世の姐さんはみんなあちきの姐さんでありんす」

睡蓮  「みんな、腫れ物を触るかのようにあんたを扱って来てんのに?」

竜胆  「あちきは女将さんの言いつけで他の姐さん方と引き離されて育ちんした。
     けんど・・・、本当は、みんなと一緒にいたかったのでありんす」

睡蓮  「あんた・・・、あっちらの事見下してたんじゃないのかい?」

竜胆  「女将さんに
    『あちきは違う、他の女郎と格が違う、馴れ合うんじゃない』
    そう言われて来んした。けんど、良く考えたらなんも違うとこなんありんせん。
    おんなじ、ただの女郎でありんす」

睡蓮  「あんた・・・、寂しかったんだね」

竜胆  「・・・、女将さんが見回りに来るからそろそろ行かないと。
    竜二郎さんは蓮太郎が匿ってくれとりんす。安心してくんなまし」

睡蓮  「・・・、あ」

竜胆  「ん?」

睡蓮  「ありがとう、竜胆。蓮太郎にもそう、伝えて?」

竜胆  「あい」

 


 

◆◆◆華屋・木蓮の部屋◆◆◆


蓮太郎 「木蓮花魁、お呼びとのことでお伺いしましたが」

木蓮  「蓮太郎、ちぃとうなじの白粉(おしろい)が上手くぬれん。手伝ってくんなまし」

蓮太郎 「新造と禿はどこに行ったんですか?」

木蓮  「もみじ屋のぜんざいを食いに行きんした」

蓮太郎 「姐女郎の身支度を手伝うのも仕事の一つ。躾がなっていないのでは?」

木蓮  「おらんもんはおらん。手伝ってくんなまし」

蓮太郎 「他の新造を呼んで参ります」

木蓮  「そんな堅い事を言わんで、蓮太郎・・・?」

蓮太郎 「若衆が女郎の部屋に入る事は禁じられております。それはご存知の筈ですが?」

木蓮  「今時そんなもんを律儀に守ってる見世なんありんせん」

蓮太郎 「あなたは年季明けが近いとはいえお職です。
    そのあなたが規律を乱したのでは、新造や禿に面子が立たない。
    もっと自覚を持って戴きたい」

木蓮  「お母さんの間夫が偉そうな事を言んすなぁ。楼主にでもなったつもりでありんすか?
    ただの若衆の分際であちきに自覚の有無を問うなん立場をわきまえんにも程がありんす!」

蓮太郎 「台所は夜見世の支度で忙しいので失礼します」

木蓮  「おんしら!若衆は一体誰のおかげでおまんまを食えてると思っておりんすか!
    あっちら女郎が股開いて男の精を抜いてるおかげだって、忘れておりんせんか?!」

蓮太郎 「忘れてなどいませんよ。ですがお客様を満足させる座敷を準備するのも俺たちの務めですから」

木蓮  「部屋に、入ってきなんし」

蓮太郎 「出来ません」

木蓮  「規律なん、黙っとれば判りんせん。入ってきなんし」

蓮太郎 「どこの若衆が規律を破ったとして俺には関係ありません」

木蓮  「昨夜、蓮太郎がどこにおったかをお母さんに言われるんとどっちがよろしんす?」

蓮太郎 「・・・っ?!」

木蓮  「上手くお母さんを寝かし付けて、遣り手を酔い潰して、何を探しておりんした?」

蓮太郎 「夜見世の時間だった筈。客の相手をしていたのではないんですか」

木蓮  「還暦迎えたじじいなん早々に果てて寝ておりんした」

蓮太郎 「・・・お部屋に失礼します」

木蓮  「そう、最初からそうすればよかったでありんす。襖を閉めなんし」

蓮太郎 「白粉を、下さい」

木蓮  「そんなに慌てんでも、しばらく誰も帰っては来ん」

蓮太郎 「支度を進めながらでも話はできるでしょう」

木蓮  「見れば見る程色男でありんすな」

蓮太郎 「手を、離してください。白粉が塗れません」

木蓮  「ねぇ、蓮太郎?おんしだって好いてもおらんあんなババァの相手うんざりしておりんしょ?」

蓮太郎 「あなたに俺の好みをとやかく言われる筋合いはありません」

木蓮  「何の目的があってお母さんの間夫の振りをしているんでありんすか?」

蓮太郎 「要件は?口止めに何が欲しい」

木蓮  「あちきの間夫になり?」

蓮太郎 「無理ですよ。俺は死にたくないんで」

木蓮  「見世に知られん方法ならなんぼでもありんすぇ?」

蓮太郎 「例えば?」

木蓮  「明日の未時(ひつじどき)、河本茶屋の二階で待っとりんす。必ず来てくんなまし」

蓮太郎 「外で会うのは人の目に触れやすく、逆に足が付きます。
    話は変わりますが、木蓮花魁は年季明けをどう過ごす積もりですか?」

木蓮  「なんだい?藪から棒に・・・。ひとまず郷(さと)に帰ってから考えんす」

蓮太郎 「今の所身請けの話もなかった筈ですね」

木蓮  「最近は身請け話も少なくなったもんねぇ。・・・っ、蓮太郎?
    なんだい後ろからいきなり抱き締めるなんて・・・。驚くじゃないか・・・」

蓮太郎 「あなたはきっと、今が一番幸せだと思いますよ」

木蓮  「ん?!カミソリなんて握らせて、何する・・・、ぁっ!!」

蓮太郎 「惨めな末路を迎えるくらいなら、今死んだ方が幸せだ」

木蓮  「ど・・・、して・・・?蓮太郎・・・」

蓮太郎 「生まれ変わったら、二度と女郎になどならないといいですね」

木蓮  「れ、んた・・・・」

蓮太郎 「さようなら」

秋吉  「あ・・・、あ・・・」

蓮太郎 「秋吉」

秋吉  「お、めぇ・・・、蓮太郎、何やったか判ってんのか・・・」

蓮太郎 「どうして、秋吉がここに居るんですか?女郎の部屋は入ってはならない筈ですが。
    ・・・と、今の俺が言っても説得力はありませんね」

秋吉  「何やったか判ってんのかって聞いてんだよ!俺ぁ!!」

蓮太郎 「取り乱しているようですね。声を抑えていただけませんか」

秋吉  「お、おめぇ・・・、こんな事が見世にバレたらタダじゃすまねぇぞ」

蓮太郎 「クスッ・・・、俺の心配ですか?」

秋吉  「も、木蓮はお前ぇと寝たかっただけだろう?安いもんじゃねぇか!」

蓮太郎 「短絡思考で人の価値を計らないでください。不愉快です」

秋吉  「ふ、不愉快ってどういうこってぇ!木蓮は若山一の花魁だ!
    その花魁がお前ぇと寝たいってそんな滅多に言わせる事なんかできねえ事をよ!」

蓮太郎 「若山一の花魁、ね。 大した気概もなくダラダラと年季を務めあげて、
    郷に帰ればどうしようなどど呑気な事を考えている女が若山一とは、華屋の格も落ちたものですね」

秋吉  「何言ってんだよ、お前っ、トチ狂ってんじゃねぇだろうな!」

蓮太郎 「何を捉えて狂っていると?」

秋吉  「寝てやりゃあいいだけだろうが!何も殺す事ねぇだろう!」

蓮太郎 「腐った女の欲求を満たす玩具になれと?女将の相手で手一杯ですよ」

秋吉  「お前ぇ、一体何の為に女将の間夫なんざやってんだよ。何を調べてんだ」

蓮太郎 「なるほど?木蓮をけしかけて俺の行動を監視させていたのはあなたでしたか」

秋吉  「それが、なんだってぇんだ」

蓮太郎 「こんな思い切った事をするなんて、木蓮では考えも及ばないでしょうから、
    誰かにそそのかされたのだとは思っていましたが、隠れて聞いているとは好都合でした」

秋吉  「お前ぇの言う事はさっぱりわからねぇよ!
    何調べてんだかしらねぇが、俺がこの事女将に言ったらお前ぇもおしまいだ」

蓮太郎 「元よりその積もりで隠れて聞いていたのではないのですか?」

秋吉  「ああ、その積もりだったさ!
    お前ぇが木蓮を殺したりしなきゃ、ゆする程度で許してやろうと思ってたがよ、
    こうなっちゃあ黙ってるわけにはいかねぇ。一切合切全部話してやるよ!」

蓮太郎 「俺はね、ゆする材料だろうが何だろうが今回の件誰かに知られているのはとても困るんです」

秋吉  「な、なんでぇ・・・。木蓮からカミソリを取ってどうする積もりだ」

蓮太郎 「昔から、遊郭の女郎部屋では良く男女の屍体が見つかりました」

秋吉  「男女の?」

蓮太郎 「間夫との心中、もしくは客が死に道中に一人では寂しいと肌を重ねた女郎と無理心中、
    独占欲にまみれた客や若衆の無理心中」

秋吉  「そ、それが、何だってんだよ」

蓮太郎 「秋吉、木蓮の部屋に上がる関係だったんでしょう?彼女一人では可哀想だ」

秋吉  「まさか・・・」

蓮太郎 「死に道中、付き合ってあげてください」

秋吉  「や、やめろ・・・、やめてくれ」

蓮太郎 「逃げる事もできないとは、腰でも抜けているんですか?」

秋吉  「だ、誰にもいわねぇ!約束するから、だから、た、助けてくれ!」

蓮太郎 「すみません、そうは行かないんです」

秋吉  「蓮太郎!やめ・・・・っ」

蓮太郎 「余計な事に首を突っ込んだ自分を責めて下さい」

秋吉  「ああああああああああああ!!い・・・、痛ぇよ・・・、痛ぇ・・・、イヤだ。死にたくねぇ」

蓮太郎 「何の覚悟もなく、中途半端な好奇心で人の秘密を暴くものではありませんよ」

秋吉  「死に、たく・・・、ね・・・、ぇ」

蓮太郎 「来世の教訓になさって下さい。失礼します、木蓮花魁、秋吉」

 


 

◆◆◆茶屋◆◆◆


新之助 「そなたが蓮太郎か」

蓮太郎 「はい。阿部新之助様にはわざわざご足労を賜った上での御拝謁恐悦至極に存じ上げます」

新之助 「なるほど、芯の通った眼差しを備え持った良い男振りじゃ。椿が心を遣ったのもうなづける」

蓮太郎 「折角の起こしなれど、この様な狭苦しい茶屋でのお迎え、申し訳ございません」

新之助 「堅い事を申すな。華屋でそなたを呼んだ日には陰間(かげま)扱いされるではないか」

蓮太郎 「見世でのお呼びたてには応じておりません」

新之助 「まず、ワシが呼ばぬ」

蓮太郎 「でしょうね」

新之助 「要件とはなんじゃ、申してみよ」

蓮太郎 「概ね、竜胆花魁より話を聞いているかと存じ上げます」

新之助 「ああ、聞いた。ワシも幕府側を調べておった所じゃが、
    目星はついているものの中々尻尾を出さんので些か参っておった所じゃ」

蓮太郎 「なれば、こちらのモノがお役に立てばと思い持って参りました」

新之助 「これは・・・」

蓮太郎 「予てより椿が探し求めていたモノです」

新之助 「金品出納帳の裏帳簿か」

蓮太郎 「はい。ただ、長年に及ぶこのやり取り、全てを持ち出すには至らず、直近のモノより三年分が限界でした」

新之助 「三年分。いや、むしろ良くやった」

蓮太郎 「それと、先程目星がついているとの事でしたので、
    こちらもお役に立つのではないかと持ち出して参りました」

新之助 「これは、連絡簿と手紙ではないか!」

蓮太郎 「目利きによる判断があれば、その筆跡から当該人物を割り出せると聞いた事があります。
    これで幕府側の内通者を割り出す手がかりになればと思います」

新之助 「これを、そなた一人で探していたのか」

蓮太郎 「下手な協力者は危険が付きまといます。
    が、たったこれだけのモノを探し出すのに十三年もの歳月を費やしてしまいました」

新之助 「よく根を上げずにやり遂げた。見事じゃ」

蓮太郎 「つきましては、新之助様にお願いがございます」

新之助 「願い?」

蓮太郎 「この先の己の身の振り方を考えておりました」

新之助 「で、あろうな。おそらくこの帳簿盗み出したのはお主だと、連中も気付いておろう。
    おぬしは、このままワシについて来るがよい」 

蓮太郎 「いえ」

新之助 「匿ってやれるのはワシだけぞ」

蓮太郎 「匿っていただこうとは露ほども考えてはおりませんでした」

新之助 「では、どうするというのじゃ」

蓮太郎 「この鏡、牡丹花魁が大切にし、椿が形代に持ち、それを俺がお預かりしていた物を、
    今こそ新之助様にお返ししたいと思います」

新之助 「よもや、そなた」

蓮太郎 「新之助様に切腹の作法の手ほどきと、介錯をお願いしたいと思っております。
    また、その腰の物をお借りしたいと存じ上げますがお聞き入れ下さいませぬか」

新之助 「なぜじゃ」

蓮太郎 「匿っていただいたとして、万が一にも捕まった場合新之助様にご迷惑をおかけします。
    そして決して口は割らぬとの気概も拷問の苦痛に耐え抜く事ができるかどうか判りません」

新之助 「そなたが捕まる様な事になる前に解決して見せよう」

蓮太郎 「この一件、万が一の危険も残してはなりません」

新之助 「そなたの身が危険につながると申すか!」

蓮太郎 「それのみではございません」

新之助 「ではなんじゃ!」

蓮太郎 「長い月日でした。そろそろ、椿の元へ行かせてはいただけないかと思うが故」

新之助 「ならぬ」

蓮太郎 「もう、疲れたのでございます」

新之助 「この件でもうこれ以上、人死にを出す訳には参らぬ」

蓮太郎 「それはできぬ相談でございます」

新之助 「そなたは生きねばならぬ!生きて、この一件全てを知り椿に報告せねばならぬのではないか」

蓮太郎 「後生にございます。どうぞ、この不詳者にお慈悲を戴きたく存じ上げます」

新之助 「・・・、心は変わらぬのか」

蓮太郎 「ようやく、椿の元へ行けると安堵しております」

新之助 「ワシはのう・・・、蓮太郎。剣の腕は、師を超え腕利きと言われておる。
    戦のない今に置いて役にも立たぬことであろうと思うておったが、
    ・・・よもやこのような形で必要とされるとは皮肉なものじゃの」

蓮太郎 「お受けいただけますか」

新之助 「略式になるが、構わぬか」

蓮太郎 ありがたく存じ上げます」

蓮太郎(M)「青光りする刀身。この光は何かに似ていると思ったら、椿の瞳に宿った蒼い炎の色だ。
    あの炎に焼きながら殺されるのも悪くないと思った。
    今、その色の刀で我が身を貫き椿の元へ行ける。
    椿・・・、今も昔も、これからもずっと永遠に君を愛しているよ」


新之助 「阿部新之助、蓮太郎殿の介錯つかまつる!お覚悟!!」

 


 

◆◆◆華屋・布団部屋◆◆◆


女将  「睡蓮!!出な!!三日で身だしなみを整えて道中を張るんだよ」

睡蓮  「お母さん・・・。道中って・・・」

女将  「新しいお職のお披露目さ」

睡蓮  「お職って・・・」

女将  「木蓮のバカが若衆と心中しちまったんだよ。まさか秋吉と出来てるなんざ思やしなかった」

睡蓮  「木蓮が・・・?秋吉と・・・?」

女将  「お職を不在にする訳にはいかないし、竜胆はまだお職を張るには若過ぎる。
    あんたが華屋の看板を背負うんだよ」

睡蓮   「いや・・・、お職になんてなったら今より忙しくなってしまうじゃありんせんか?」

女将  「何バカなことを言ってるんだい。間夫なんざ飼うのやめて精を出して仕事しな!
    そしたら年季明けだって早くなる。正面切って会えたほうがお互い嬉しいだろう?」

睡蓮  「お母さん!教えて!」

女将  「何をだい」

睡蓮  「あちきは何のためにここに売られてきたんでありんすか?」

女将  「何の為って・・・、そんなもん私が知る訳ないさね。家族が生活に困って売られたんだろう」

睡蓮  「あちきの家はそんな生活になん困っとりやせんかった。
    裕福じゃなかったけど両親共仕事があって真面目に働いて家族三人暮らしていけとった!
    お父もお母もあちきの事大切にしとったから売りになん出す訳ありんせん!」

女将  「あたしゃ女衒から売られたあんたを買っただけの話さね。
    別嬪で随分な高値を付けられたからね、きっちり働いて貰わないとウチだって困らぁね」

睡蓮  「女衒が受け取った金は一体どこに行ったのでありんすか!誰が儲けたんでありんすか!」

女将  「知らないよ。しつこいね。とにかくここから出てきちっと体を整えて支度をしな!」

睡蓮  「あっちはイヤじゃ!もう客なんとりたくない!」

女将  「甘ったれた事言ってんじゃないよ!あんたは女郎なんだよ!」

睡蓮  「もう・・・、堪忍してくんなまし」

女将  「諦めな。とにかくお職を張れる見栄えのある女を出さなきゃならないんだ。
    よく見たら睡蓮、あんた繊細で綺麗な顔立ちしてんじゃないかい。
    華屋のお職なんて遊女の憧れさ、それをイヤだなんて舐めた事言ってんじゃないよ、とっとと支度すんだね」

竜胆  「女将さん、あちきが睡蓮姐さんの身支度を整えて差し上げてもかまいんせんか」

女将  「竜胆・・・、頼むよ。ところで、蓮太郎がどこに行ったか知らないかい?」

竜胆  「蓮太郎の事は女将さんの方がよう知っとりんしょ?あちきは知りんせん」

女将  「そうかい。じゃあ、睡蓮を頼んだよ」

竜胆  「あい」

 

女将  「ちくしょう・・・!裏帳簿がごっそり無くなってるなんて、蓮太郎に決まってるんだ。
    あいつ、この為にあたしをたぶらかして・・・!
    あれがお上にばれたら若山はおしまいだよ。ちくしょう!
    見付けたらタダじゃ済まさないよ」

 


 

◆◆◆睡蓮の部屋◆◆◆


竜胆  「姐さん、まずはきちんと食事をとってくんなまし」

睡蓮  「もう、・・・もう、イヤだよ。竜二郎以外にお開帳なんてしたくないんだ」

竜胆  「夜見世の始まる時間になったら北側の勝手口から竜二郎さんを逃がして差し上げんす」

睡蓮  「・・・え?」

竜胆  「ずっと、蓮太郎がここ華屋の隠し部屋で匿っておりんした。
    けんど、蓮太郎も亡くなってしまった今これ以上匿うのは難しいのでありんす」

睡蓮  「蓮太郎が、亡くなった・・・?」

竜胆  「蓮太郎はあちきの母の遺言にそって自分の役割を果たして、母の後を追いんした」

睡蓮  「母・・・、竜胆の?」

竜胆  「あい、四代前のお職だった椿花魁、あちきの母でありんす」

睡蓮  「じゃ、蓮太郎が想い続けていた人って」

竜胆  「母でありんす。睡蓮姐さんみたいな悲劇を繰り返さない為に命を賭けた人でございんす」

睡蓮  「あちきみたいな?」

竜胆  「人攫いにあって女郎にされてしまうような悲劇でありんす。
    他にもこの若山は沢山の犯罪を抱えておりんす。
    蓮太郎はそれを暴き出して自害しんした」

睡蓮  「そんな・・・、竜胆はそれでいいのかい?あんただって蓮太郎を好いていたんでありんしょう?!」

竜胆  「父の様に思っとりんした。今は母と、蓮太郎の残した使命を全うするのがあちきの仕事でありんす」

睡蓮  「仕事って」

竜胆  「姐さん、ここから足抜けをするんなら今日を置いて他にはありんせん。
    だからしっかり食べて蓄えてくんなまし」

睡蓮  「竜二郎と、足抜けをさせて貰えるのかい?」

竜胆  「必ず逃げ切ってくんなまし。追っ手はゆるいと思いんす。一つだけ協力してくんなまし」

睡蓮  「何をすればいいんだい?」

竜胆  「この華屋から火の手が上がったら、
    姐さんと竜二郎さんとで羅生門河岸(らしょうもんがし)と西河岸の長屋に火をつけてくんなまし。
    今日は空気が乾燥していて北風が強い。華屋からの火の手はすぐに若山全体を包むでありんしょう。
    小火で構いんせん。 ちゃんと非常口近辺に待ち合わせ場所を決めてそこから二人で、逃げてくんなまし。
    旅の足しになる様に僅かながら金子を用意させていただきんした」

睡蓮  「あんたは、どうするのさ」

竜胆  「あちきはこの若山の膿を焼き尽くしんす」

睡蓮  「膿?」

竜胆  「食べ終わりんしたね、ここに男もんの着物がありんす。
    髪を解いて頭から頭巾をかぶっていれば余程の事がない限りばれんせん。
    二人で幸せになってくんなまし」

睡蓮  「竜胆・・・」

竜胆  「あい?」

睡蓮  「可能なら、あんた、生きるんだよ?」

竜胆  「クス・・・、あい、ありがとうございんす」

 


 

―――――――――・・・


竜二郎 「華屋から煙が出てる。炎が見えるのもすぐだな。
    羅生門河岸の方が危険が高いから、西河岸の方をお雪に頼んだが、うまくやれてるか?

 

竜二郎 「・・・櫓やぐらの鐘が鳴り始めたな、・・・くそう人がごった返して、お雪を見つけらんねぇ!
    非常口のこの辺のはずだが、くそう、どこだ!」

睡蓮  「竜二郎!!」

竜二郎 「お雪!!良かった・・・、怪我は」

睡蓮  「あちきは大丈夫だよ、竜二郎は?」

竜二郎 「俺もなんともねぇ、とにかく見つかって良かった」

睡蓮  「きっともう少ししたら、もっと人が集まってくる、その頃を狙ってこの非常口から出よう」

竜二郎 「お雪、あの竜胆って娘」

睡蓮  「大丈夫だと思うしかないよ」

竜二郎 「そうか。そうだな。お雪、行こう」
睡蓮  「うん、竜二郎・・・」

 

 

竜胆  「やっと、・・・、やっと火の見櫓やぐらの鐘が鳴り始めた。随分と前にもう火の手は上がっていたのに」

女将  「竜胆・・・!!あんた・・・!!あんたが火を点けたのかい!!」

竜胆  「あら、女将さん、逃げんでもよろしんでありんすか?んふふ・・・、ふふふふふっ・・・!!」

女将  「逃げるさ!逃げるに決まってるだろう!けど、金が・・・。私の貯めた金が!!」

竜胆  「・・・、ふふ、うふふふふ、あははははは、あはははははは
    あーっはっはっはっはっは!!!」

女将  「どうしたんだい、あんた気でも触れちまったのかい!そこをおどき!!」

竜胆  「こぉーーーんなに火の手が上がってるってのに!!!
    まんだ金を持ち出そうとする強欲ぶりが・・・おかしくってさぁ!!!!」

女将  「なんだって?!」
    あはははははは!女将さん、おんしには・・・、ここで死んでもらいんす!!!!」

女将  「っう!」

竜胆  「新之助様に懐剣を用意していただいたのでございんす。
    けんど・・・、帯の上からじゃあ刺さらんようでありんしたなぁ・・・」

女将  「新之助・・・?阿部新之助?が?」

竜胆  「おんや、女将さん。切っ先は少し刺さったようでありんす。腹の内はどす黒いけんど、血は真っ赤でありんすよ。
    ほぉーーら、見てくんなまし、綺麗な赤でありんす。ふふふ・・・」

女将  「り、りん、・・・どう、おまえ・・・」

竜胆  「幕府と繋がってこの若山を壟断し、贅を貪り尽くしたおんしももうおしまいでありんす。
    万が一この火事の中から生き延びたってすぐにお縄になりんすよ?・・・だから。
    ここであちきの遊びに付き合ってくんなまし(興奮気味に)」

女将  「遊び、だって・・・?!」

竜胆  「そう。女将さんみんなに『お母さん、お母さん』って慕われておりんしたねぇ。
    あちきにもお母さんらしく遊んでくんなまし。
    あちきはね? 子供のころから人間とはどなんして出来てるのかずぅーーっと気になっておりんした。
    女将さん、切り刻んだらわかりんしょう? ほーーーーら・・・、指が一本・・・」

女将  「あああああっ!!」

竜胆  「にーーーほん」

女将  「や、やめ!!!やめ・・・!!!!」

竜胆  「手の指全部なくなりんしたら、足の指も見してくんなまし。」

女将  「やめ、やめな竜胆!!!!」

竜胆  「痩毒にかかった女郎は鼻が取れるといいんすなぁ・・・。痛いんでありんしょう?
    取ってみんしょう、お母さん?」

女将  「ヒッ・・・!! うぐああああああああああ!!!」

竜胆  「あは・・・、あはは・・・、あはははははははは!!! きたなあい顔!!」

女将  「り、・・・・、んどう・・・・・・、おま、・・・え・・・」

竜胆  「あちきはね? おかあさああん? 母、椿が産み落とした女郎達の執念の塊なんでございんす。
    何百人の女郎達がお歯黒溝(おはぐろどぶ)の向こう岸を見ながら命を落としていったんでありんしょう?
    その命の結晶とも言える金を女将さん、・・・おんしがもつ権利なんございんせん!」

女将  「う、あぁぁあぁ!!り、ん・・・ど、ぅ・・・、やめて・・・」

竜胆  「うふふ・・・、苦しいでありんすか?お母さん。まんだ、とどめなんさしてはやりんせーん。
    この炎は業の炎・・・、おんしの罪の分だけ燃え広がりんす。ふっ!!」

女将  「くは・・・、ぁ・・・、あんただって・・・、や、けしんじまうん、だ・・・」

竜胆  「元より承知でありんす。痛いであリンしょう?女郎の痛みはこんなもんじゃ済まされやせーん??」

女将  「ぅ、ぐ・・・、ぁ・・・、ぁ、や、め・・・、て・・・、りんど・・・」

竜胆  「んふふふふふ・・・・・・、ははは・・・あはは・・・、ふ・・・、うく・・・
    母を・・・、母を、返してくんなんし!!(憎悪)」

女将  「うぁ・・・、ぁ、目、を・・・」

竜胆  「蓮太郎を返してくんなんし!」

女将  「あ・・・、ぁ、や、め・・・」

竜胆  「まんだ!死ぬんじゃ!ありんせん!おんしの罪を!この炎で!全部!洗い流して行きなんし!!」

女将  「・・・ぁ・・・」

竜胆  「死んでしまった・・・。女将が死んでしまいんした。ふふふふ・・・、アハハハハは
    青色・・・、白色・・・、橙、桃色。なんて綺麗な炎・・・うふフフふふ、ふふ、あはは
    燃えて、燃えて、ぜんぶぜーーんぶ無くなって仕舞えばいい、
    こんな腐った街など消えてしまえあははははははははは


竜胆  「・・・女将さんの血、甘くておイシい・・・、はは、んふふふふ・・・
    あーーーーーはっはっは!!!」

 

 

 

 

 

炎が踊っているようで、綺麗・・・、袖に火がともりんした・・・。
一緒に舞い踊ろうと、踊ってさしあげんしょう?我が身尽きるまで共に踊りんしょう。


色は匂えど散りぬるを
我が世誰ぞ常ならむ
有為の奥山今日越えて
浅き夢見じ酔いもせず


皆様ご存知の方もござりんしょう。この歌に隠された恨みの言葉を
我ら女郎に一体なんの罪があったのだろうか、勿論ござんせん

故に知るべし、咎無くて死す


その後、この若山は史実から抹消されんした